細々と薬草を販売し、個人獣師として小さな仕事をこなす日々に不満は抱いていなかった。先日、幼馴染であるセドリックに頼まれて、第三騎士団と共に高ランクの害獣に指定されている『氷狼』の件を解決したのが、唯一まともな大仕事といえる。

 誰にも明かした事はないが、ラビには動物の声が聞こえた。

 それもあって、獣師としては一番に彼らの気持ちを汲み取れ、意思疎通も図れるのだ。だからこそ、薬草師よりも獣師の方が自分に向いている職業のような気もしていた。

 しかし、専門として獣師の仕事を多くこなした事はなく、他の獣師との仕事を比べた事もなかったから、自信は持てないでもいる。そもそも、ラビは出身地であるホノワ村を出た事がないのだ。

 どうやら、この世界には害獣だけでなく『妖獣』と呼ばれる種類の生物もいるらしい、と先日の事件で初出張した際に知った。村の外に出るのは、経験を深めるためにも良い事だと思わされた一件であったのも確かだ。