けれどラビは、負けず嫌いに火が付いていたから、そんな彼にしてやられたのだと思ったらプチリと切れていた。後先考えず、王宮沿いの塀越しに並べてあった中型の植木鉢を持ち上げる。
「セドの馬鹿! さっさと行けったらッ」
「うわっ、ちょ、待ってくださいッ」
それを見たセドリックが、慌てて逃げ出した。その直後、彼女の手から植木鉢が思いきり放たれて、馬車から大きく顔を覗かせて「何やってんだ?」と様子を窺ったジンの顎鬚に、見事直撃した。
悶絶する呻き声を上げて、ジンが馬車の外に崩れ落ちる。それをバッチリ見届けたノエルが、『……どんまい』と呟いた。
※※※
セドリックに腹が立ったラビは、自由にノエルとお喋りも出来ないうえ、じろじろと集まる王都市民の視線の中にいたくなくて、王都暮らしのために借りたアパートメントタイプの宿に、真っ直ぐ向かった。
初日に一泊した以来、換気もされていないから、きっと埃か湿気臭い空気が溜まってしまっているのだろう。目的地に近くなった時にそう想像してしまい、人の気配のしない建物の階段を上がる頃には、足が重くなってしまっていた。
「セドの馬鹿! さっさと行けったらッ」
「うわっ、ちょ、待ってくださいッ」
それを見たセドリックが、慌てて逃げ出した。その直後、彼女の手から植木鉢が思いきり放たれて、馬車から大きく顔を覗かせて「何やってんだ?」と様子を窺ったジンの顎鬚に、見事直撃した。
悶絶する呻き声を上げて、ジンが馬車の外に崩れ落ちる。それをバッチリ見届けたノエルが、『……どんまい』と呟いた。
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セドリックに腹が立ったラビは、自由にノエルとお喋りも出来ないうえ、じろじろと集まる王都市民の視線の中にいたくなくて、王都暮らしのために借りたアパートメントタイプの宿に、真っ直ぐ向かった。
初日に一泊した以来、換気もされていないから、きっと埃か湿気臭い空気が溜まってしまっているのだろう。目的地に近くなった時にそう想像してしまい、人の気配のしない建物の階段を上がる頃には、足が重くなってしまっていた。