既に他の騎士達は、馬車に乗り込んでいて、御者の支度も終わりそうだった。そろそろ出発してしまうだろうから、彼が別れの言葉を告げて馬車に向かってしまう前に、さくっと確認しておかないと、また忘れてしまうかもしれない。

「ねぇ。セドはオレの事、抱っこしたり膝の上に乗せたいと思う?」

 ラビは、思い付いてすぐ、セドリックに尋ねた。幼い頃から続いている、ヒューガノーズ伯爵の過剰なスキンシップについて思い返していたから、口に馴染んでいる愛称の方で呼んでしまっていた。

 その瞬間、ノエルに向かって少し背を屈めていた彼が、その姿勢のままピキリと硬直した。数秒ほど、ピクリとも動かなくなる。

 ようやくセドリックが、その姿勢のまま、ぎこちない動きでラビに顔を向けた。

「…………あの、ラビ? その質問は、一体どこからきたんですか……?」
「ほら、伯爵って、今でもオレを『子供扱い』しているでしょう? もう子供じゃないのにって教えたら、まだやめる気は全然ないみたいに『セドも自分と同じ意見のはずだから、本人に確認してごらんよ』って、変な主張をしてくるんだもん」