それでも、氷狼の件では頑張っていた。その姿は見て知っていたから、皆の事を考えて行動する人なんだろうな、と団長として偉い人である事は分かっている。だからラビとしても、自分なりに一目は置いているつもりだった。

 自分は今、第三騎士団の専属獣師だ。だから、これから世話になる、と挨拶したいとも考えていた。それに、一緒に過ごした中で親しさを覚えた彼が、よく胃の辺りを押さえている事を心配してもいたから、元気だろうかと気になってもいる。

 すると、どうしてかセドリックが、表情そのままに小さな笑みをこぼした。

「ラビは、そういうところは、きちんとしていますよね」
「おいコラ、それどういう意味?」
「ああ、怒らないでください。ちゃんと伝えておきますよ。ノエル、あなたの事も知らせておきますから」

 続いて、セドリックがそう言って、ノエルに声を掛けた。

 姿が見えるせいで【声】が聞こえるようになってしまっているため、口を開かず静かにしていた彼が、チラリと視線を返して、狼らしかぬ豊かな表情でニヤリとする。