ラビは、彼らが馬車に乗るのを見届けて、その様子を肩越しに振り返って見ていたセドリックに声を掛けた。

「これから皆で、今度はグリセンに報告するの?」
「彼はいちおう、第三騎士団の団長なのですが……」

 出会い頭から早々に呼び捨てにしていたと思い出して、セドリックが困ったように視線を戻した。

 少し小首を傾げた彼の、蒼灰色の癖のない髪がさらりと揺れて、その濃い藍色の瞳が遠慮がちに細められる。それを見つめながら、ラビはこう言った。

「オレ、こっちに来てから、まだ会えていないからさ。明後日には、ちゃんと挨拶しにいくって、そう伝えておいてもらってもいい?」

 第三騎士団の団長は、グリセン・ハイマーズという細身の男だった。体調がすぐに悪くなったみたいによく顔色を青くして、頻繁に胃痛も起こして腹を抱えたりしている。ひどい時には、気絶してしまう事もあった。

 なんだか軍人っぽくない、とても気が弱そうな雰囲気をした男なのだ。口調にも厳しさはなく、目元も優しい。