場所が分からないだろうから、初出勤となる明後日の朝は、手が空いている人間で迎えに来させるつもりであるという。出来ればユリシスには来て欲しくないな、と思っていたら、声に出していないのに、何故か本人に睨まれてしまった。

 王宮前を歩く人々が、きちんと大人しく座っているノエルを、遠巻きにチラチラと見つつ通り過ぎている。そんな中、ユリシスがラビを見下ろして、神経質そうに細い銀縁眼鏡を押し上げて口を開いた。

「生憎、私は副団長の副官としてある身ですから、そんな暇はありません」
「なぁんだ、良かった。眼鏡野郎は来ないんだ」
「露骨に安心するのはおやめなさい、普通なら嫌味だと気付くべきです。それから、よくも私本人を前にして『眼鏡野郎』と平気で言えたものですね」

 険悪さを増したユリシスから、怒涛のような説教が起こると察知したサーバルとジンが「団長も支部で待ってますからッ」と声を掛けて、用意が整った騎士団の大型馬車への乗車を促した。副官の説教も勘弁だ、と口にしたヴァンが「行くぞ」とテトを呼んで後に続く。