ラビは頭に過ぎった光景を振り払い、ルーファスをチラリと上目に見つめ返した。

「……その法律の申請って、通す時に揉めなかったの?」
「どうして?」
「いや、どうしてって、その…………」

 言い淀むと、ルーファスが親愛溢れるいつもの顔で微笑んだ。

「言っただろう? その日のうちに申請が通って決定が降りたんだよ。私が本申請を用意する手間もなかった。その当日内で私だけでなく、複数の人間が国家獣師の推薦案を書いて、全て受理された」

 いつも以上にその口調が優しいような気がして、ラビは小さな疑問を覚えた。

 ノエルが、なるほどなと察した顔で小さく息を吐き『担当したやつの中に、難色を示す人間はいなかったってわけか』と呟いた。

『つまり、全員がクソみたいな迷信を信じてる訳でもねぇらしいな』

 それ、どういう事?

 ラビは彼に尋ねようとしたのだが、まるで場のしんみりとした空気を変えるように、ルーファスが次に発した言葉で凍り付いた。