渡り鳥だから、そのまま旅立ってしまったのだろう、とノエルは推測を口にした。すると、途端にラビの横から、ベック達が顔を覗かせて「そういえば鳥が乱入してきたなッ」と、思い出してすぐ好奇心たっぷりに色々と質問し始めた。

「お前さ、狼で動物だし、鳥の言葉も分かるのか?」
『まぁ、そうだな』
「あの鳥達、なんて言ってたんだ?」
「ネクタイしていた鳥もいたよな!?」
『くそッ、テメェらうるせぇぞ今すぐ黙れ。そんで触ろうとしている手を引っ込めろ三男野郎』

 最後の台詞を、ノエルは一呼吸で言い切った。しかし、狼と喋れているという状況だけで楽しいのか、ベック達は叱られた効果もなく、話しかけ続けていた。

 森を出る手前に停めてあった馬車の前で、彼らとは別れる事になった。先にセドリック達が挨拶を済ませて、馬車の準備を慣れたように進める中、ラビは先程までにあった事を思い返して、自然な表情で改めて礼を告げた。

「途中で、オレの事を助けようとしてくれて、ありがとう。悪さはしないようにね」
「へへっ、なんか正面切って礼を言われると、変な感じだな」

 お互い怪我がなくて良かったな、とベックが不器用な様子で笑った。そして、弟達と揃って「またボコられるのは勘弁だ」と苦笑を浮かべると、相棒の黒大狼にも手を振って去っていった。