「これから話す事は、一部他言無用でお願いします。ここにいる『彼』は、この年齢にして害獣専門として活躍し、国家獣師への推薦も受けているほどの技術と知識を兼ね備え、幼い頃に拾った狼に『人の言葉まで教えてしまった』天才なのです」
「国家獣師の推薦って、マジかよッ」
「この凶暴なガキなら、害獣専門って言われても肯ける……!」
「狼に人語を教育するとか、やべぇなッ」

 ベック達が、「つまり『天才獣師』なのか!?」と、勢い良くこちらを見てくる。けれど、そう紹介されたラビは、ユリシスがほぼ棒読みである事に気付いていたから、どうしたものかと困ってしまって、愛想笑いも出てこないでいた。

 ノエルが『喋れる理由としては、無理があるよな』と、向こうに聞こえないような声量で言って、ヴァン達が揃って「同感だ」と小さく頷いた。セドリックは、ちょっと不安そうな表情を浮かべていたが、優秀な副官に引き続き任せる事にして、額に手をあてて溜息をこぼすに留めた。