騒ぎの中で、考え無しに『見えない動物がいる』と教えてしまったけれど、混乱や不安要素を増やさないためにも、妖獣という喋れる生物が存在している事は説明しない方がいい。相手は、昨日ちょっとボコっただけの盗賊である。

「……どうしよう、ノエル……?」
『心配すんな。いざって時は、バラさないよう心身共に恐怖を叩きこんで、脅す』

 秘密を探られたら、と不安になって大きな瞳を揺らせたラビを見るなり、ノエルは絶対零度の眼差しを盗賊団へと戻した。冷静にそう言いながら、下についていた右前足から凶器のような爪を出して、バキリと地面を砕いていた。

 その一部始終を見ていたジンが「容赦ねぇな、ワンコ」と真剣な様子で言い、テトが同意するように真面目な表情で頷いた。サーバルも、「冷酷君主みたいな事を言わないであげて」と顔色を悪くする。

 数秒ほど、セドリックは真面目な表情で思案していた。考えを終えてふっと緊張を解いた彼を見て、ヴァンが「どうします?」と待っていた対応の指示を尋ねる。