もう幼くないのに、癖みたいに、たびたび『小さなラビィ』とも呼んでくる。今日だけでも、数回は聞いた。

 自分はもう十七歳なのにな、とチラリと思って、ラビはそれを考えながら、ノエルの背中に乗った。歩き出した彼に「ねぇ」と声を掛けたけれど、そんな小さな疑問も、やっぱりどうでもよくなって、ぎゅっと抱きついていた。

「ノエル、大好きだよ」
『また突然だなぁ。ぎゅっとする癖も、昔からそのまんまだ』

 彼が、そう言っておかしそうに笑う。でも引き続き、その口調は柔らかいままだった。

『俺だって大好きだよ、ラビィ。こんな俺が、誰よりも優しくありたいと思ってしまうほど』

 口の中に落としされた、下町風の荒々しい訛りも一切ないその呟きは、ラビの耳には届いていなかった。ノエルは出口を目指して一気に走り出していて、その足はすぐに床を離れて宙を駆けた。