「えっ、そうなの?」

 違いが分からないや、とラビは口にして、ノエルの頭や首のふわふわとした毛並みに触れた。相変わらず、柔らかいのに毛質はしっかりとしていて、指先を埋めるといつも通り暖かい。絡まる事なく指の間をすり抜けていく。

 ついでに耳をつまんでみたら、彼がチラリと苦笑を浮かべて『ほんと、昔からそこ好きだよなぁ』と頭を少し右に倒した。

『さて。ゆっくりしていたら、この空間の崩壊に巻き込まれちまう』

 そう口にしたノエルが、立ち上がって辺りを見回した。それから、再びこちらを見ると、ふっと雰囲気を和らげて、普段は好戦的な赤い獣の瞳を、ひどく穏やかに細めた。


『さぁ帰ろう、小さなラビィ。俺の背に乗って、離れず付いておいで』


 彼はそう告げて、まるで人間を思わせる様子で、愛情深くふわりと微笑んだ。

 時々、持ち前の荒々しい口調が、こうして微塵にもなくなって、とても柔らかくなるのを、ラビはいつも不思議に思っていた。別の口調で話していた時代もあったのだろうか、と、そんな阿呆みたいな想像をしてしまうくらいだ。