短い間でしたが、旅の道中にお時間をくださり、ありがとうございました。僕は、このままアスラルダ師匠についていきます、さようなら、いつかまた会えますように……少年の声がそう言う。

 ふっと振り返ると、頭を下げる小さな金髪頭が見えた。丁寧に腰を折って胸元に当てられた手は、同じようにとても白くて――

             ※※※

『腹の中に隠し宝物庫の空間を作る術仕様ってのも、面白い発想だよなぁ』

 不意に、ノエルの声が耳に入ってきて、ラビはハッとして目を見開いた。

 何か夢を見たような気がする。よくは覚えていなかったけれど、ノエルが気付かないくらい、ほんの一瞬だけ意識が途切れていたらしいとは分かった。

 辺りを見渡してみると、木材質の壁が見えた。足元は、同じ材質から出来た長い廊下になっていて、そこをノエルが、自分を乗せたまま軽い足取りで駆けて進んでいる。

「…………あのさ、これが大蛇の中……? オレら、口の中に飛び込んだよね? それなのに、喉が真っ直ぐ平坦の廊下になってる…………」