「あいつ、こっちが攻撃する直前に動くと思う!?」
『それはない! 身体を動かすための魔力は反応してねぇッ、だからそのまま突っ込め!』
「分かった! せーのっ」

 意気込む声と同時に、ラビは身体を捻って勢いを付けて足を振り上げ、大蛇の顎下に強烈な蹴りを放っていた。

 一撃では足りないだろうと、念には念を入れて、その一瞬後に身をもう一回転させて、反対側の足も叩き込む。そんな彼女の隣では、弾丸のように突っ込んだノエルが、強度マックスの石頭で、大蛇の顎の下をしたたかに打っていた。

 どれほどの威力で打ち込まれたのか分かる、ゴッという重々しい衝撃音が響き渡った。大蛇の頭が少し持ち上がり、その重い巨大な頭部が、ぐらりと揺れる。

 ラビの落下が始まる直前、ノエルがそのまま素早く宙を駆けて、大蛇の真上に躍り出た。敵意剥き出しで見開かれた彼の真っ赤な獣目が、煌々と光を放って、漆黒の毛並みがざわりと逆立った。