信頼しているラビは、迷う事なく了承して、大蛇の口に飛び込むために走るスピードをぐんっと上げた。近づいた大蛇の表皮が、かなり厚い事を見て、剣の刃は打撃器にしかならないと判断し、直前には鞘に収める事を考える。

 その元気いっぱいの返答を聞いたユリシスが、「は」と呆気に取られた声を上げて、前を行くラビの華奢な背中に目を向けた。ガバリと振り返るヴァンと同じく、セドリックも勢いよく顔を向けて叫んだ。

「ちょッ、ノエル。それで本当に大丈夫なんですか!? 大蛇の口に飛び込むって、ラビが食べられてしまうなんて事はないですよね!?」
『んな可能性が微塵にでもあったら、させるわけねーだろヘタレ野郎』

 前方を見据えたまま、ノエルが間髪入れずそう言った。

 容赦がない返しを受けて、セドリックが「ヘタ……」と、単語の全部を言えないまま絶句した。改めてラビ以上の、恐らくは彼女の悪い見本になったであろう喋る狼の口の悪さを痛感して、ジンが「ひでぇ言われようだ」と喉仏を上下させる。