微塵にも億劫さのないラビの輝く目を見て、ノエルは『相変わらず、怖がらないんだな』と笑った。そして、抜刀して前を向く彼女の隣で、どこか誇らしげに胸を張ると、床で蠢く蛇の群れではなく、同じように大蛇を見据えて言葉を続ける。

『行くぜ、ラビ。左は任せろ』
「右はオレに任せて。……よしっ、行こうノエル!」

 ラビは一呼吸後、剣を構えて迷いなく駆け出していた。

 同時にノエルも動き出し、邪魔な蛇を蹴散らしながら猛進する。直後にセドリックが気付いて「援護しろッ」と手を振り、彼らも一斉に後に続いた。

 ヴァンが上司の前に位置を構え、「あのワンコと、じゃじゃ馬獣師めッ」と、強がった笑みを浮かべて言った。

「話し合いでは、俺が突破口を開くって、ワンコには言い聞かせていたってのによ!」
「ノエルは『突っ切るから援護しろ』としか言わなかったから、俺としては、その時点でこうなるとは思っていたよ……」
「副団長っ、諦めるの早すぎますよ!? その時点で、なんでガツンと言わなかったんですか……。そもそも時間ないからって、あのワンコから作戦について碌な説明もされていないんですが!」

 ラビは、言い合うセドリックとヴァンが、それぞれ斜め後ろに追い付くのを感じながら、飛びかかってくる蛇を剣で退かしていた。