まるで魔法みたいだ。帰ってしまったんだろうか?

 ラビは首を捻った。隣にノエルが戻ってくるのを感じて、話し合いが終わったらしいと察して目を向けると、見つめ返してきた彼がこう言った。

『猫野郎は、素直に帰ったみたいだな。随分人間に慣れていたみてぇだから、何かしでかすんじゃねぇかと思ったが、杞憂だったか』

 まぁ知識はあっても、閉じた『門』に引っかからないくらいの小物の魔力じゃ、どうにも出来ねぇか――と、ノエルがよく分からない事を口の中に落とす。すぐに思案を終えるようにして、眼差しに強さを戻して蛇の群れへ目を向けた。

 ラビは、長い付き合いの親友の横顔や雰囲気から、動き出す事が決まったのだと察して尋ねた。

「このまま真っ直ぐ、大蛇まで?」
『おぅ。この騒ぎでバラけている蛇の大群の中を、真っ直ぐ進む』

 ハッキリと答えて、ノエルはラビを見た。

『剣の用意はいいか?』
「バッチリだよ。ノエルは?」
『ははっ、俺は平気に決まってるだろ』