『こんな時に、なんで最後の神官の言葉を思い出すんだろうな。アレ、まだ有効だっけか?』

 そんな独り言を呟くと、ふわりと舞い上がって、彼は改めてラビに目を留めた。

『んじゃ、俺は一旦『さよなら』だ。呼び出された術の効力が切れる』
「時間が決められているの?」
『本来、妖獣ってのは、聖獣なんかとは違って人間世界には適していない。その特性で、身体はあるのに【実体化】しないと人間の目には映らねぇし――術で作られた『俺の扉』は、案内の目的を果たしたら閉まるようになってる』

 まぁそんな事を説明しても、あんたには分からないんだろうなぁ。

 トーリが、そうおかしそうに続けた。ラビが小首を傾げると、指を向けて『だって獣師なんだろ?』とニヤリとする。

『というか、あんた動物とも話せるみたいだな。こんなに好かれるってのも珍しいけど、やっぱそれでいて、魔力がないってのが不思議だよなぁ』

 無事に術具がゲット出来るといいな、じゃあな獣師ラビ……そう最後の言葉が告げられると同時に、手を振って踵を返したトーリの姿が、ふっと消えていった。