「そもそも翼を、手みたいに動かしていた点を突っ込もうぜ……。けど、そういえば獣師って動物使いでもあったっけって思い出して、ちょっとだけチビ獣師を尊敬したわ」

 彼女が鳥に向かって発したのは、一言だけだ。まるで喋っているようだという違和感も小さくて、見ていた男達の疑問は、獣師という専門の職柄のせいだろうという認識に埋もれてしまっていた。

 ラビは、ジンに珍しくも褒められたとも気付いていなかった。どこからか『俺は猫じゃねぇっつってんだろ!』と聞き慣れた声がして、ノエルと共にその声の主を捜していたからだ。

 ネクタイの鳥と入れ違うように、ふわふわと灰色の仔猫が飛んできたのが見えて、目を見開いた。思わず「あ」と声を上げたら、すぐそこまで来たトーリが、緊張感もない呑気な表情で『よっ、さっきぶり』と片手で応えてきた。

『なぁんか心配だったからさ。俺の方で、協力してくれる『蛇の天敵』を連れてきたぜ。こいつらくらいの中型鳥だったら、この蛇共くらい敵じゃない』

 そう言った彼が、愛らしい仔猫の顔に不釣り合いな、ニヤリとした笑みを浮かべた。