よくよく見れば、それは床が見えないほど大量に重なった蛇の群れだった。周囲の壁の下部分も埋まってしまい、支柱にも巻きついて、もぞもぞと身体を動かしている光景に、ラビはゴクリと唾を飲み込んだ。

「うわぁ……予想以上に数が多い……。これは、ちょっと気持ち悪いかも」
『想定以上の大集団だな』

 同じように眼下に広がる蛇の群れの様子を眺め、ノエルが普段はある荒っぽい口調を、まるでうっかり忘れたかのように『これは予想外の数だ』と口にした。落下の軌道を、セドリック達の元へと向けながら、ふと、奥の暗がりへ目をやる。

 その瞬間、しがみついている背中ごしに、彼の身体がピキリと強張るのを感じた。どうしたんだろう、と思って同じ場所を確認したラビは、大きな金色の瞳を見開いた。

 そこには、持ち上げた首が二階部分を越える巨大な蛇が、どっしりと身を構えていた。外で見た巨木を思わせる身体は、鮮やかな橙色とアメジストの斑模様で、影になった頭部分から見える瞳は、生気を感じない黒曜石みたいに真っ黒だ。