その様子は、一見すると愛らしい仔猫が、ピンクの肉球を持った前足で強がっているような構図である。けれど、無視出来ないほど大きな声量で、ドスが利いたその声が耳に入ってきてもいたから、客観的に眺めると頭が混乱しそうになった。

 ラビとしても、ノエルの意見には同感だった。だから一度目の前の光景から目をそらして、よそに飛びかけた思考を本題へと戻して考えた。

 誰にも渡さないためではないのなら、訪れた人間が、その術具を入手出来る方法はあるのだろう。そして、摩訶不思議な蛇が『実在』している現状は、ノエルの姿が他の人の目にも見えるようになる可能性を、ぐんと高めているのだ。

 そうすると期待感も膨らんで、つい背筋を伸ばしてトーリを見つめた。ラビの視線に気付いた彼が、渋々ノエルへと向き直って、質問に答えるべく口を開く。

『言っておくが、俺だって術具の入手手順は知らねぇよ。思い付くのは、通常の術具継承認定で、妖獣師の技量を見る方法が取られている可能性くらいだな』