『あんた、諦めない気なのか?』
『そんだけけったいな術が掛けられているって事は、使うには申し分ないほどの価値のある術具って事だろ。しかも、オリジナルと同じくらいの肉弾攻撃が可能って事は、つまりその巨大な蛇が、作られた幻覚のくせに【実体化】している証拠だ』

 まさに俺が求めているタイプの術具だ、これは手に入れて試してみる価値がある――と、ノエルが宝石みたいな真っ赤な瞳をギラつかせて、口許に不敵な笑みを浮かべる。

 その好戦的な様子を見て、トーリが思い切り顔を顰めた。

『あの術具には、まだ膨大な魔力が残されたままなんだぜ。契約者の仲介なしに直接制御するってなると、うまく扱いきれないと思うんだけどな。バカデカい魔力を消費するような妖獣向けだ』
『その方が好都合――んで、入手方法を知ってんのか、猫野郎?』
『だから俺は猫じゃねぇよッ、鼻先引っ掻くぞ犬野郎め!』

 話を勝手に戻されたトーリが、毛を逆立てて爪を出した。