ラビとノエルは、長らく沈黙したまま視線を向けていた。

 しばし見つめ合った後、その眼差しを受け止めていたトーリが、ようやく尻尾を少し揺らして『それ、マジで……?』と口にした。

『え、何、つまり阿呆にも自分から仕掛けを捜し出して、そのスイッチを押したのか? 二階の足場のやつって、悪ふざけみたいに露骨に設置されていた仕掛けなんだけど、馬鹿なんじゃねぇの?』

 多分、馬鹿なんだろうなぁ……。

 ラビは、仕掛けを踏んだ例の三人組の兄弟盗賊を思い返した。ザイードの街では、老婆を手助けして自分に取っ捕まり、先程はこちらに向かって必死に手を差し伸ばしてきた。そのせいもあって、どうも憎めきれないでいる。

 彼らは不器用すぎるというか、考え無しすぎるというか。先日にも思ったばかりだけれど、悪党には向いていないのではないだろうか、とまたしても考えてしまう。

 同じような表情で視線をそらしたノエルが、数秒もしないうちに、右に傾いていた耳をピンと立てて戻し、深々と溜息をこぼした。