「兄貴ッ、俺ら刃物なんてほとんど使わねぇし、全然あたんねぇよ!」
「蛇が細すぎるんだけど、どうしたらいいと思う!?」
「くっそぉ、こうなったら……ッ」

 ベックは、テトがサポートとして大活躍する中、ざっと辺りに目を走らせた。とある物に目を留めると、ハッとして瞳に自信の輝きを宿す。

「これだ! こっちの方が絶対正確だろっ」

 そう口にして駆け寄ってすぐ、ベックは瓦礫を手に取った。弟達に現物を見せると、手本のようにそれを「そぉぉおおい!」と、蠢く蛇の群れに向かってぶん投げた。

 真っ直ぐ飛んだ瓦礫が、見事に数匹の蛇に直撃し、まとめて呆気なく砂と化した。それを見て、ベックはますます自信が戻った顔で、弟達を振り返る。

「原理は分からねぇが、こいつらは『砂の蛇』なんだッ。投石戦法で、どうにか、なる!」
「さすが兄貴ッ、断言する表情が凛々しい!」
「超かっけぇ!」

 直後に三人は、次々に瓦礫を拾い上げて、武器としてそれを投じていった。そのやりとりを背中で聞いていたユリシスが、「彼らは、阿呆なんですかね」と呟き、警戒するのも馬鹿らしいとでも言うように、そちらを完全に彼らとテトに任せた。