その瞬間、まるでその大声に反応したかのように、近づいて来た蛇の一匹が、身体をくねらせて飛び上がった。セドリックは間髪入れず、先陣を切るように数歩前に踏み出して、空中で口を広げたその蛇を一刀両断していた。

 感触は、まるで本物だった。けれど切断と同時に砂と化して消えてしまい、ますます正体が分からなくなる。

 その直後、次々に蛇が襲いかかってきて、いちいち驚いてそれを考えている暇はなかった。ひとまず斬れる、今はそれが分かっただけでいい。

 自分達に残されたスペースに侵入させないよう、セドリックが動き出してすぐ、ヴァン達も「副団長に続け!」と果敢にも蛇を斬り伏せ始めた。ユリシスが素早く剣を振るい、数匹のヘビを吹き飛ばして、忌々しげに口許を歪める。

「なるほど、『砂の亡霊』とはよく言ったものです……!」

 数が多すぎて、斬っても斬っても減る気はしない。砂となって消える様は、殺しても知らないうちに蘇っているのではないか、という錯覚まで起こさせた。足元にいた蛇の頭を潰しても、崩れ落ちた砂の残滓が残らないせいでもある。