いつの間にか、広間の周りは蛇の大群に囲まれていた。壁の隙間や手すり、支柱の上へ通路から、大量の蛇が次々に溢れ出ている。

 尋常ではない、床を埋め尽くす量の蠢く蛇の大群を見て、三人兄弟の盗賊団が「ぎゃあああああッ」「気持ち悪い!」「オバケ蛇が出たあああああああッ」と、両手を上げて全力の駆け足で戻り始めた。

 その蛇は、身体が半透明だった。長さは大人の男の腕二本分ほどで、透明度は個体によってバラつきがあり、細長い身体がするすると地面を這う動きに呼応するかのように、様々な色彩が発光して蠢いていた。透明度が弱い蛇は、色鮮やかな毒蛇を連想させた。

「ちょっと、気持ち悪いかも……」

 一同が、広間中央の巨大な穴の近くまで下がる中、テトが退路を断つように埋め尽くす蛇の大群の様子を眺めて、そう言った。

 蛇の色や柄には、同一性がない。まるで大陸中にいる、膨大な蛇科の種類が集っているようにさえ見える光景を前に、ジンもゴクリと唾を飲みこんで口を開く。