「ちょっと待ってください副団長ッ、一番の幼馴染が落ちてブチ切れる気持ちは察しますけど、あいつにはデカいワンコがついているんだから、大丈夫ですよ。今は威圧して殺しにかかる場合でもねぇでしょうに!」

 歩き出していたセドリックが、年長組の部下の声を聞いて、ピタリと足を止める。ベック達は、助かったという顔をしたが、向けられ続けている殺気量に耐えられず「おっかねぇッ」と逃げ出した。

 それを見たテトが「いいんすか?」ときょとんとして手短に尋ねると、ユリシスが身体の強張りを解いた。入口に向かう盗賊団の後ろ姿から、ふいっと視線をそらして「放っておきなさい」と、溜息交じりに眼鏡を押し上げる。

 その時、緊張が解けて静けさが増した場に、ぽとり、という音が上がった。

 全力疾走していたベック達が、走り出して数メートルの距離で、疑問を覚えた様子で「ん?」と声を揃えて急停止する。地面を張って進んでくるような音が聞こえ始めて、同じように異変を察したセドリック達も、辺りの様子へと目を走らせた。