ラビは、自分に指を突きつけてきたトーリを見て、その口から発せられる台詞も耳に入ってこなくなった。なんてやんちゃで可愛い仔猫だろう、と妄想に飛んで思考が占領され、素の表情の満面の笑みを浮かべてそう言っていた。

 その様子を正面から見たトーリが、姿勢そのままに沈黙した。数秒掛けてようやく察した様子で、ぽつりと小さな呟きを落とす。

『俺の話、また聞かれていない……というか、こいつ子供ってだけじゃなくて、女の子でもあるのかよ』

 口の中でぶつぶつ言いながら、もう色々と諦めた様子でがっくりと肩を落としていた。それでも、実のところ『すごく可愛い』という心からの称賛と褒め言葉は、嫌ではなかったらしい。

 機嫌が直ってふんぞり返ったトーリを、ノエルが阿呆じゃないのかという目で見やる。

『ふっ、まぁいいだろう。何せ俺は、紳士な妖獣だからな。まずは質問にあった術具だが、恐らくは『ラティーシャ様の首飾り』だろうとは推測してる』
「首飾り?」