「ノエルの姿って、他の人には見えなくて、自分の意思で見せられるようになればいいなぁって。そうしたら、オレ以外の人とも交流が取れるし、友達も出来るかもしれないでしょう?」
『契約もしてない妖獣を連れて、しかも友達を作ってあげたいって? そう発想するのも珍しいな。だって妖獣ってのは、こっちの世界では【実体化】しないと見えないのが普通なのにさ』

 そう言った彼が、ふと、じっとこちらを見つめてきた。

 コテリと小首を傾げる様子は、声が青年期前の少年のものであるという想像には結びつかないくらい、やはり無害な仔猫といった印象しかなかった。

『ちょっとだけ、触ってみても構わないか?』
「ん? 別にいいけど」

 どうしたんだろうな、と思いながら、ラビはふわりと浮いて寄ってきたトーリを見守った。彼がふわふわの手を伸ばしてきて、金色の前髪がくすぐられてすぐ、肉球がぽふっと額に触れる感触に癒されて、思考が飛んだ。