『まぁ時代もだいぶ変わったみたいだし、いっか』

 トーリはそう口にして、あっさり自己解決したかと思うと、器用にも宙の上で胡坐をかいた。不機嫌さもなく見つめてくる様子は、大きくてつぶらな丸い瞳もあって、非常に愛らしい。目の色である金緑は、まるで宝石みたいに綺麗だ。

『んで、何を知りたいんだ? この神殿に残された案内役も、俺が最後だからな、『使い手』見習いの子供を困らせるような事はしないぜ。ああ、先に言っておくけど、ここを使っていた奴らは、とっくの昔に『解散』して出ていっちまったから、術関連の知識書物は、全部運び出されてココにはないぞ?』

 右前足を振って、トーリがきょとんとした表情で確認してくる。それを耳にした瞬間、ノエルが機嫌を損ねた顔で口を挟んだ。

『おい猫野郎、ラビは『使い手』の修行巡礼者じゃねぇよ。ちなみに、今は魔術も妖獣もない時代で、こんがらがるから『術』と『妖獣師』って説明してる』
『だから猫じゃねぇっつってんだろうが!』