両手に収まりそうな仔猫の彼が、途端に愛らしい顔で、右前足の爪を出してドスの利いた台詞を吐いた。ノエルは相手にならないと言わんばかりに、むしろ頭が痛い、とでも言うかのように目も向けず重い溜息をこぼす。

 ラビは困惑が隠しきれないまま、ひとまず彼らの口喧嘩が勃発する前にと、仲裁する意味でも声を掛けた。

「……あの、すみません。見た目とのギャップがすごくて、オレ、戸惑いが止まらないんだけど……」

 すると、仔猫が顰め面をこちらに向けてきた。『まぁいいか。俺を呼び出したのは、あんただよな』と爪を引っ込めると、宙に浮いたまま直立の姿勢で腕を組み、こう続けた。

『勝手に『猫さん』なんて呼ばれるのは癪だからな。先に名乗っておく、俺はトーリだ』
「えぇと、オレは獣師のラビ。こっちは相棒で親友のノエルだよ」
『獣師? 使い手じゃなくて?』

 先程ノエルが口にしていた、トーリ、を名乗った仔猫が、短いふわふわの腕を組んだまま首を捻る。