その声は、青年期前の少年のものである。そこもまた、見た目とギャップがあるなと考えていたら、彼がピンク色をした肉球が見える手を上げて、ビシリと器用に人差し指を向けてきた。

『いいか、俺は決して『猫』じゃねぇぞ』
「…………」

 何故か、相手の妖獣の方から、開口一番にそう断言してきた。

 けれど残念ながら、その妖獣は、どこからどう見ても仔猫だった。こちらがまだ何も言っていないのに、自身から先にそう訂正してくる時点で、いつも間違われているらしいとも察せて、ラビは引き続き返す言葉が浮かんでこないでいた。

 仔猫の姿をしたその妖獣が、こちらに指をつきつけたまま『ちっ』という表情をした。まるで反抗期の幼い猫みたいだ。

 つい呆気に取られていると、隣でノエルが『はぁ……』と深い溜息をこぼして、前足で顔を押さえて洞窟の天井部分を仰いだ。

『勘弁してくれよ。ここに来てまた猫かよ……』
『猫じゃねぇっつってんだろデカいの! 尻尾の毛むしんぞコラ!』