出てくるのは、ノエル以外では初めてとなる妖獣だ。そう身構えていただけに、その姿形のどこにも『動物図鑑に載っている普通のソレ』との違いが見付けられないのが意外でもあった。ちょっと不思議な子が出てくるのかもしれない、と予想して期待していたせいでもある。

 青白い光がやむと同時に、ソレがパチリと目を開いて、こちらを見つめ返してきた。大きな瞳は、ふわふわとした上品な色合いの灰色の身体と相まって、更に愛らしさを伝えてくる金緑である。

 長らく、黙って見つめ合ってしまっていた。

 ラビは言葉が出てこなくて、ついノエルに手で合図を送った。どうしようもっと驚いた反応した方がいいのかな、と伝えると、彼が尻尾でこちらの背中を軽く叩いて、これは無理があるだろ、と返してきた。

 すると、まるで首の後ろを持ち上げられたかのような姿勢で浮遊している『その動物』が、愛嬌しか感じない生後数ヶ月のような顔を、思いっきり顰めて『あ?』と柄の悪そうな声を上げた。