実際に扉が目の前にあるわけではないから、ラビはどうにか考えてそう想像し、そこから小さな動物らしき何者かが現われるのを待った。

 強弱を付けて光る壁が、次第にその輝きを強くしていった。

 不意に、キーン、という耳鳴りのような不思議な音が空気を震わせる。次の瞬間、青白い光が、鏡の反射のように壁の一部に小さな円を描いて、まるで水の波紋のような波打ちと共に、そこから一匹の小型動物が浮いて現われた。

 それは大人の手にすっぽりと収まるサイズで、全身が灰色のふわっふわの体毛に包まれていた。

 成体のようなくびれはなく、お腹がぽっこりと出ている。浮かんでいるせいで、中途半端な長さの尻尾が垂れていて、大きな耳の下にある両目は、眩しさを回避するように閉じられており――

「…………」
『…………』

 その動物が一目でなんであるのか分かって、ラビは、ノエルと共に口を閉じてしまっていた。