『いいか、ラビ、特定の役目を与えられる小物の妖獣ってのは、大抵は人間みたいな好奇心は持ち合わせていない奴が多いんだ。ここがどこで、他にどんな秘密が隠されているか、なんていうのは連中にとって重要じゃなくて、一つの役目だけを当然みたいにこなすパターンがほとんどだから、自分の役目に関係ない事は求めな――』
「お話をしない子が多いってこと?」

 昔から動物に好かれる体質だったラビは、自身のこれまでの経験が、一般の獣師にはないものだと疑問に思わないまま、よく分からなくてそう尋ねた。

 話しを遮られたノエルが、思わず一瞬沈黙して『『お話し』……』と、彼女の素直で愛らしい口調を口の中で反芻する。そして数秒ほど、場は完全に静まり返っていた。

 地面に目を落として、じっと黙り込んでいる彼が不思議になって、ラビは、「どうしたの?」と声をかけた。

 伏せていた耳を先に上げて、ノエルがゆっくりとぎこちなく顔を上げた。なんだか引き攣った愛想笑いを浮かべてきたので、よく分からないけれど「ん?」とにっこり笑い返してみたら、何故か途端に、彼が顔を前足で押さえてしまった。