ラビは言われた内容を、頭の中で反芻した。それから、ようやく理解したという顔を彼に向けて確認した。

「つまり、ノエルみたいに他の人には見えない、お喋りが出来る妖獣がこの向こうにいるの?」
『岩の向こうというか、妖獣世界の特定の箇所に繋げられている状態というか――あぁ、うん、分からないって顔だな。簡単に言えば、その妖獣が暮らしている家の玄関を、ノック出来るようになってんだ』

 そして、呼び出されたら、人間世界への一時的な出入りを許される。

 思い返すように呟いたノエルが、ふっと冷静な表情に感情を戻して『なんだか嫌な予感がするんだよなぁ』と、不安そうに視線を返してきた。ラビは、どうして彼が期待外れだと言い、そのうえ困ったような表情をしているのか分からなかった。

「ずっとここを出入りしていた妖獣なら、少しは何か知っているかもしれないよ?」
『うん、お前ならそう言うと思ったんだよ』

 先にも言ったが、情報を持っている事は期待出来なくてだな、とノエルは説いた。相手の妖獣が、どんな種族なのかについても嫌な予感が込み上げるのだが、そちらの直感については気のせいであって欲しい、と、つい本音をこぼしつつ続ける。