しばらくすると、数人の人間が円陣を組めそうな、円形状の行き止まりに到着した。正面にある壁には、落書きのような記号らしき物が彫られていて、ノエルと共にその前に立ったラビは「なんだろう?」と小首を傾げた。

「ここで行き止まりみたいだけど、もしかして何か秘密の通路を開くために必要な、暗号だったりするのかな」
『あながち間違いじゃねぇな。これも術の一つだ、言葉で発動する仕組みになってる』

 とはいえ、と、ノエルは途端に乗り気でなくなった様子で、どうしたもんかなと首を傾げた。

『これは特定の妖獣を出入りさせるための『扉』だ。宝物庫(ほうもつこ)や書物庫なんかで、それを管理させる程度の小さな妖獣用だから『砂の亡霊が守るほどの宝』の在り処に繋がる可能性については、期待出来ねぇし……このスペースの広さからすると、恐らく一部の金銭的な価値がある物を、保管していた倉庫の一つだったんだろう』

 そう推測を口にして、彼が狭いこの場をざっと見やる。