ラビの問いかけを受けて、ノエルは視線をそらして言葉早くそう答えた。話を切り上げるように『こっちの方から術の気配がする。行ってみようぜ』と言い、優雅なたっぷりの毛並みを持った尻尾を揺らして誘った。

 足元は、岩肌がゴツゴツとして歩きづらかった。ラビは転倒してしまわないよう、慎重に歩き進んだ。何度か手をついた壁の岩は、濡れているわけでもないのにしっとりとしていて、まるで磨かれたように滑らかな手触りだった。

「そういえば、光が一切入っていないのに真っ暗じゃないよね。それも不思議な術が働いているからなの?」
『術の中だと、視界を奪う効力をかけられていなければ、こんな感じだな。この場所が崩れてしまわないように守るための結界と、外側から存在を隔離する術が応用されているみてぇだが、場が神聖過ぎて、俺にはちょっと感知しづらい』
「ノエルは凄いね、なんでも知っているんだもの」