「露骨に『気持ち悪い』『気味が悪い』という顔をしないで頂けますか?」
「!? お前、なんでオレの言いたい事が分か――」
「残念ながら全部顔に出ています。これは個人的な気遣いではなく、私は自分の立場と役割に沿って行った事です」

 ユリシスは眼鏡を指で押し上げ、普段より棘のない事務的な声でそう口にした。

「客人が部屋を訪れたら、コートを預かる人がいるでしょう。まさにあれです」
「そうなのか? オレ、よく分からないんだけど、言ってくれれば自分でどっかに置いたのに」

 すると、ユリシスがいつものように眉間に皺を寄せた。まるで、それだと私が付いてきた意味がなくなるでしょう、君は馬鹿なのですか、と言いたげな気配を感じて、ラビもむっとして睨み返した。

 二人の険悪な雰囲気に気付いたセドリックは、出会った時から喧嘩が絶えない部下と幼馴染を思いながら「落ち着いて下さい」と仲裁に入った。

「ラビ、ユリシスは自分の仕事をしているだけですから、ね?」
「あ。引っかけられそうな場所発見。なんだ、入口の方にあったのか」
「お願いですから、ラビ、前を向いて下さい……」