その瞬間、ラビは、不意に足元が消える感覚に襲われた。

 言い返そうとして開いた口から「え」と言葉をこぼした。頭の中が真っ白になって、何が起こったのか分からなかった。


 頭に被っていた帽子が、その拍子に外れて飛んでいくのを感じた。隣を走っていたベック達が、ハッとして「おいクソガキっ!」と、焦って手を伸ばしてくるのが見える。

 なんでそんな必死になってんの、と一瞬の浮遊感の中で疑問を覚えた。

 あなた達はただの盗賊で、オレとは今日で二回目に会っただけでしょう。どうしてそんな表情をして、こっちに向かってくるの――


 あ、そうか。オレの身体が『落ちて』いるんだ。


 ラビは唐突に、自分の足元の床が崩れたのだ、と正しく理解した。下に目を向けてみれば、そこには深い闇が広がっていて、自分の金色の前髪がふわりと宙に舞うのが見えた。

 誰もが忌み嫌う金髪金目だ。それなのに、頭にターバンを巻いた男達が「こっちに手を伸ばせ!」と、こちらに向かって手を差し出したまま再び叫ぶ。