もしかしたら本当に、彼の意思一つで皆に姿を見せる事が出来るような、不思議なアイテムだってあるのかもしれない。そう考えると、わくわくしてきた。目先の問題は、捜し場所が広範囲である事だろうか。

「ノエルが警戒するくらいの場所だし、ルーファスが言っていた『宝』があるとすると、この広間か、その周辺って事になるのかな」
『そうだろうな。奥の祭壇に隠されている部屋の通路があるのか、それとも予想以上に深い地下層の、どこかの階に保管されているのか……』

 思案しつつ、ノエルが言う。

『近づけば、厳重にかけられている封印術の気配も察知出来るかもしれねぇし、ひとまずは、ちょっと回ってみるか――おいラビ、派手には動くなよ? 人間手製の昔の仕掛けってのは、煉瓦の一部とか、案外床に小さな突起のボタンを設置していたりするからな』
「分かってるって、任せてよ」

 言いながら歩き出したラビは、大きな金色の瞳を、好奇心に輝かせていた。微塵の不安も感じていないらしい笑顔を見て、隣をついて歩き出したノエルが、ぼそりと『時々うっかり鈍さを発揮するからなぁ……心配だ』と、耳と尻尾を伏せた。