「天井の一部が、崩れてしまっているな」

 巨大な穴から、視線を真っ直ぐ上へと辿らせて、セドリックがそう言った。ヴァンが辺りを警戒して窺いつつ「そうっすね」と答えて、言葉を続ける。

「俺としては、こっちに来るまでに蛇を一匹も見ていないのが、ちょっと気味が悪いとも感じます」
『あやしいと思った術具の仕掛け場所は、全部避けてきたからな。だが、それが例の『砂の亡霊』と関わりがあるのかは、分からねぇ』

 ラビの隣まで、一つ飛びで戻ったノエルが、耳をピンと立てて告げる。

『ここからは、マジで要注意だな。どうやら、この広間が聖域のド真ん中だ、あちらこちらに魔力が蠢いていて、気配がうまく掴めない。建物自体が術具の効果を高めるようにも設計されているせいで、何重の仕掛けがあるのか未知数だ』
「オレはよく分からないけど、空気が違う気はする。ノエルの背中の毛が、少し立っているのも珍しいよね」
『妖獣にも、色々と種類やら生息域があってな。俺は種族的に、聖域とは少し相性が悪いんだ』