ノエルが歩みを再開して、ラビ達は辺りの様子を窺いながら、慎重に足を進めた。

 建物内は、亀裂が入ったり一部崩れている箇所から、日差しがこぼれ落ちていた。長い年月が経つ中で、自然災害などを受けて修繕や補強がされなかったせいだろう。壁の一部が剥がれ落ちている箇所も目に留まった。

 ほど良い緊張感を持っていたセドリックが、第三騎士団の副団長らしいキリリとした表情で「ノエル」と呼んだ。

「古い遺跡の危険性については、俺も経験からある程度は知っています。だから、あなたが先導役として前に立つとしても、ここからはラビには、隊列の中央にいて欲しいと考えています」
「副団長の意見には賛成だ。俺としても、本来先陣を切る役割も持った先頭位置に、チビ獣師を置くのは反対だ」

 ヴァンがそう言った。きょとんとして「なんで?」と振り返るラビを見て、少し呆れたような表情を浮かべて、けれど説く言葉を呑みこむように一度言葉を切ってから、こう続ける。