向こうに停められた馬車を、木に身を隠して覗きこんでいた次男が、尊敬の目を向ける。そのそばで、二十歳になったばかりの三男が「でもさ、兄貴達」と呼んだ。

「ここに『とんでもない化け物が出る』って話は、本当なんかな?」
「んなの、ただの迷信だろ。見てみろよ、動物だって一匹もいやしねぇ」

 そう促されて、尋ねた三男は、次男と共に森の中の様子を改めて確認した。ローブ姿ではなくなった騎士服の男達と、見た目の小ささからは想像もつかない、騎士見習いのような軍服に身を包んだ『凶暴な少年』が去ったそこは、静まり返っている。

「とりあえず、あいつらに付いていれば『遺跡』とやらに辿り着ける。勘付かれないよう距離を開けて、出来るだけ風下から後を追うぞ」

 ベックは、弟達に声を掛けた。そうして、逃げ足と忍び足だけは一流の、たった三人の兄弟盗賊団は動き出したのだった。