「今のところ、注意すべき害獣の脅威がないってのは、有り難いな。とっとと先に進める」
「とはいえ、警戒されるのは、突然現われるという害獣タイプの蛇ですかね。『砂の亡霊』と呼ばれているだけあって、全部が蛇の姿をしているのかは分かりませんが、高い確率でそうなのでしょう」

 ユリシスが、考えつつ相槌を打つ。

 途中で引き返した過去の調査隊の記録から、森で他の生物が確認されたという記述はなかった。そんな中で『砂の亡霊』という表現や、彼らを追いやったという『唐突に現われる大量の蛇』が警戒すべき問題だった。

 当時、害獣を専門にしていた国家獣師でさえ、逃げ帰ったらしい。現われる場所や、タイミングは分かっていない。それは遺跡の近くで発生するのか、当の遺跡内で起こるのかも予想が難しかった。

『仕掛けがあるモノであれば、迂闊にそいつを動かさなければいい。ただ、それが一定の距離に来た生物を対象に、結界みてぇに反応するパターンの術だったら厄介だな。その場合、術の元をどうにかしないと、次から次に湧き出てくる』