ジンは、質問を近くで聞いていたテトへ目を向けた。すると彼は、覚えていないという微塵の後ろめたさもない視線をサーバルへと送った。察知した彼が、自身を見つめるラビ達三人に気付いて、緊張感のない後輩達だなぁ、と柔らかな苦笑を浮かべて口を開いた。

「資料によると、徒歩で四十分の距離にあるらしいよ。迷わずに進めば、もっと早いんじゃないかな」
『人間の目では分からないだろうが、僅かに人が出入りしていた頃の道の痕跡がある。それを辿れば、恐らく真っ直ぐ着く』

 ノエルがそう言い、巨大な木の根に飛び乗って、赤い瞳で森の奥を見据えた。

 唐突に声を聞いたサーバルが、ガバリとそちらに目を向けた。見えない姿を探すように視線を往復させた後、「そうか、あの黒大狼、声だけは聞こえるように出来るんだっけ……」と、どこか呆気に取られた声で呟いた。

 その時、話し合いを終えてセドリックがやって来た。