セドリックは心底優しいのだ。幼い頃から過ごして見てきたから、どれほど彼がいい人なのかはよく知っていた。騎士学校に行く事が決まった時は、実のところ、しばらくは会えないのかと寂しく思ったものだった。

 彼は、とても優しい人だ。
 ただの幼馴染を、ずっと気にかけて世話を焼くくらいに。

 その時、目の前で扉が締められて、ラビは我に返った。後頭部に彼の手が滑り込んできたかと思ったら、そのまま帽子を床に滑り落とされて、代わりに髪を撫でられながら運ばれた。

 戸惑っている間に、セドリックがそのままベッドに転がった。まるで寂しいと言わんばかりにぎゅっと抱き締められ、ラビは「ぐえっ」と色気もない呼気を吐き出した。
 ローブ越しに感じる胸板が固いうえ、押し付けられるようで非常に苦しい。気のせいか、彼の父親であるヒューガノーズ伯爵が彷彿とされた。

「ちょ、おいコラ、セド――」
「おやすみ、ラビィ」