『そもそも、「暑苦しい」と言った時点で、お前の鈍さは称賛したいレベルだし、ただ純粋に「一緒に寝よう」っつったセドリックの健気さは、うっかり同情しちまうレベルだぜ』

 そうしている間に、セドリックが鍵の件に気付いて入室した。小じんまりとした室内には、一人用の小さなベッドが一つだけあり、入ってすぐの場所で足を止めた彼が、こちらを見て「ノエルと話しているんですか?」と言う。

 口調は全く酔っていないのに、これで寝惚けているというのも変な幼馴染である。ラビが諦めたように「そうだよ」と答えると、セドリックが愛想良く扉の方を振り返った。

「おやすみなさい、ノエル」
『うわぁ……、こいつが考えてる将来設定がよく分かる台詞だ…………』

 つか当然のように俺もずっと一緒にいて暮らしている設定なのか、とノエルは呟いた。それはそれでどうなんだろうな、と両方の長い耳を頭ごと少し右へと傾ける。

 ラビは、幼馴染が姿も見えない親友に対して、丁寧に挨拶してくれた様子にうっかり現状を忘れて感動した。ノエルはそこにいるんだと、心の底から信じて、分かってくれているのだと感じさせられて嬉しくて、昔よくやっていたように彼の服をぎゅっと掴んでしまっていた。