顔には酔ったような雰囲気は微塵にも出ていないが、こちらを片腕で抱いて、しっかり肩に担ぎ上げているセドリックの身体は、やたら体温が高かった。ノエルみたいにもふもふとした触り心地もないので、一緒に寝ても多分、暑苦しいだけでちっとも楽しくないだろう。

 構ってよと子供みたいにガッチリと抱き上げている腕も、鬱陶しくて「こんなデカい弟いらんッ」と少し苛立ちを覚える。四歳年上の癖に、いつまで経っても弟みたいな幼馴染だと思っていたが、酔ったら更にそうなるらしい。

 セドリックが、ポケットから鍵を取り出した。宿の部屋は、宿泊客が入るまで鍵が掛けられていないと気付いくまでに、もうそんなに時間はなかった。

「くっそ、意外と馬鹿力で腕が外れないッ」
『落ち着けよラビ。俺は中に入らねぇが、近くにはいるからさ』
「オレ一人でこいつの面倒みんの!?」

 ラビは、セドリックの腕を解こうと必死になっていた手を止めた。ガバリと視線を向けると、ノエルが『こいつは寝惚けてるだけだからな』と、吐息交じりによく分からない事を言った。