「は? 寂しい思いとかしてないけど。というか、誰かと間違えているんじゃない?」

 まるで、一緒に暮らしている家族に言うみたいな台詞だなと思った矢先、突然正面から抱き上げられて、ラビは「うぎゃっ」と色気のない声を上げていた。

 抱き締めるように腕が回されたかと思ったら、そのまま肩に担がれてしまった。一体何が起こっているのだろうか、と唖然としている間にも、彼がしっかりとした足取りで歩き出してしまう。

「え、――は? ちょッ、セド何やってんの!?」

 ラビはびっくりして、すぐ近くにある幼馴染の横顔を見た。彼はのんびりとリラックスした表情で、歩く先を見つめている。

「大丈夫ですよ、一緒に寝ましょうね」
「いやいやいや、なんでそうなんの!」

 ぎゃあぎゃあ騒いでいる間にも、彼が当然のように階段を上がってしまっていた。宿泊部屋の扉が続く廊下は静まり返っていて、セドリックの足は迷う事なく一つの部屋の前で止まる。